労災被害に遭われたご本人に代わっての示談交渉も可能です

1.労災事故のあと、賠償金はどのように請求するのか

労災事故にあってしまった場合、労災保険がおりることはもちろんですが、事故の発生が会社の安全配慮義務違反や被害者以外の従業員の過失によるものである場合、別途会社に対して損害賠償請求を行うことができる場合があります。労災保険による補償・給付は、治療費・休業補償の一部など、一定程度の損害をカバーするものの、慰謝料など全ての損害をカバーする機能までは備えていません。したがって、会社に対して行う損害賠償請求も、労働災害にあってしまった労働者にとっては重要となります。

しかし、「損害賠償請求を行うことができる」と言われても、具体的にどのような経過をたどるのか、イメージがわかない方もいらっしゃると思います。

労災事故に限らず、損害賠償請求を行う手段は、大きく2つに分けることが可能です。

第1に、訴訟等の法的手続きを利用する手段です。
この方法は、間に裁判所等を挟むことによって、双方の言い分が対立しても中立かつ妥当な判断を仰ぐことができたり、強制執行による解決につながったりするという利点があります。

第2に、交渉による解決を図る手段です。交渉とは何か、次項で解説いたします。

2.損害賠償請求を交渉で行う

交渉とは、要するに、希望額の賠償金を払ってくれないかを訴外で話し合う方法です。
この手段の最大のメリットは、迅速な解決が狙えるという点です。

✔ 訴訟のケースの所要時間

仮に、訴えを提起して損害賠償を請求する場合を考えてみましょう。ご自身だけで訴訟の準備をすることは難しいでしょうから、弁護士に依頼することになりますが、訴訟の準備には数か月を要するのが通常です。また、訴訟を起こす場合には弁護士報酬も高額になる傾向があります。

訴えを起こされた会社もまた、弁護士に依頼するなどして、訴訟対応を行います。訴状が届くということは会社側にとって相当なインパクトがあります。その結果、請求内容について徹底的に争われるケースが多いです。

裁判所でやりとりが行われるようになってからも、一か月に一回程度の期日(裁判所等で話し合いが行われる日のことをいいます)を幾度も重ねて解決に至るケースが通常です。場合によっては、1回の反論のために会社側の準備に数か月の時間がかかります(裁判所は、このような場合には会社の準備が終わるのを待ち期日を設定することが一般的です)

そうすると、解決する頃には1~2年の期間を要していた、ということも珍しくありません。

✔ 交渉のケースの所要時間

交渉の場合は、損害額の見積もりのため必要な資料さえそろっていれば、会社に対して「これくらいの損害がある」と伝えて、会社がそれを受け入れれば解決ということになります。訴訟の場合に比べれば、おのずと解決時間も短くなります。事案にもよりますが、交渉開始から、早くて数か月で解決するということもあり得ます。

もっとも、これまで勤めていた会社に対し、自身で交渉するということは心理的に非常にやりづらく、損害の見積もりや法的知識といった面においても不安を感じる方が大半かと思います。また、素人が交渉しても、会社側がまったく話し合いに応じてくれないケースが一定数あることも事実です。さらに、労働災害に基づき損害賠償請求を行う場合には、労働災害が発生した原因が会社や他の労働者の過失行為にあることを主張・立証する必要があります。会社側にどのような注意義務があるのかどうかについては法的規範であるため、各種の公的なガイドラインや民間のガイドライン等を参照しながら、または過去の裁判例等を参照しながら類似事案との比較や検討をする作業が必要になります。この点の主張と立証を求められたとき、素人の場合には困難であり、どうしてよいか分からないというケースも想定されます。

✔ 弁護士が行う交渉

そこで、経験・知識ともに豊富である弁護士に交渉を依頼するという方法があります。

弁護士は、いただいた資料をもとに、賠償請求の可否、適切な賠償額を判断したうえ、会社に対する示談交渉を行うことができます。

弁護士が交渉することの強みは、法的根拠を示して法的手続きによる解決も可能であることを示すことで、その結果、相手を交渉のテーブルにつかせることができるという点です。

また、弁護士が会社に対して示談交渉の連絡を行うことで、会社も弁護士に依頼することが多いです。そうすると、専門家同士が交渉を行うことになるため、お互いに法的手続きによる解決を図った場合の結論を見通すことができ、相場に沿った和解が早期に実現することも珍しくありません。代理人を通じて話し合いをすれば、柔軟な話し合いができる可能性も出てきます。

さらに、仮に交渉が決裂したとしても、交渉で争点がはっきりしていれば、ある程度整理された状態から法的手続きを始めることができるため、いきなり訴訟を選択する場合よりも(争点を把握できている状態であるため)、手元にある資料をもとに迅速に訴訟を提起し、訴訟上でも争点整理ができ、解決が図れるというメリットがあります。

3.交渉のデメリット

これまでは、弁護士に依頼して交渉を行うことの良い点を見てきましたが、訴訟を選択したほうが良い場合もあります。それは、交渉に比べ、訴訟による解決の方が、賠償金が多くなる可能性がある場合です。

交渉では、互譲によって話し合いがまとまることが少なくないため、お互いの言い分の間をとった賠償金の提案がなされることがあります。例えば、労災事故にあった方が会社には300万円の賠償金の支払い義務があると主張したものの、会社があなたの言い分の一部は通らない可能性があるから、200万円なら支払います、と応じた場合を想定します。

その後相互に結局は互譲し、250万円の支払いで合意して和解が成立したとします。そうすると、裁判では300万円満額認められた可能性があるが、250万円で和解したということになります。時間をかけてでも事実を明らかにして裁判所に主張の認容を求め、満額の300万円を回収したいというご希望が強い場合には裁判を選択することがいいでしょう。また、代理人の弁護士から満額認容の見通しが明るいと説明があれば、時間をかけてでも裁判に踏み切ることも一つの選択肢といえます。

ただし、裏を返せば、訴訟において新たな証拠が出てくるなどして会社の言い分が通ってしまうというリスクは当然伴いますので、上述の事例に沿っていえば、訴訟に踏み切った結果として200万円の獲得にとどまってしまう可能性もあるということには注意が必要です。

この点、交渉では、このようなリスクを減らすことができるといったメリットもある、といえます。

4.まとめ

この記事では、労災事故の賠償金の請求方法について解説しました。内容は、以下の通りです。

賠償金請求の方法は、大きく分けて、訴訟等の法的手続きと交渉の2つがある

訴訟等の法的手続きは賠償金を最大化できる可能性がある一方、非常に時間がかかることが多い(労働審判による和解又は審判での解決を除く)

事案によっては交渉は迅速な解決を図ることができ、かつ、裁判所で厳しい判断がなされるリスクを回避することもできる

以上、労災の損害賠償請求における交渉について説明してきました。労災被害に遭われた場合にはまず早急に弁護士に相談してください。その後、交渉から依頼をすることをぜひお勧めします。

労災被害に遭われた皆様、ぜひ弊所へご相談ください。弊所の弁護士は、皆様が適正な賠償金を獲得できるよう徹底的にサポートいたします。

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