Q 一人親方の労災の場合、補償の内容はどうなりますか。

A 具体的には以下の内容になります。

1.補償対象となる範囲

補償の対象となるのは、業務災害または通勤災害を被った場合で、一定の要件に該当する場合です。補償対象となる業務は一人親方の業務ごとに異なりますが、たとえば建設業の一人親方であれば、下記の①~④の場合が補償対象となります。
①請負契約に直接必要な行為を行う場合
②請負工事における作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合
③請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
④請負工事に関する機械や製品を運搬する作業及びこれに直接附帯する行為を行う場合

また、通勤災害については、一部の一人親方等を除き、一般の労働者と同様に取り扱われます。
※一部の一人親方等:個人タクシー業者、個人貨物運送業者、漁船による自営漁業者

2.給付基礎日額・保険料

給付基礎日額とは、労災保険の給付額や保険料算定の基礎となるものです。申請に基づき、労働局長が決定します。一人親方の給付基礎日額は、3500円から25000円までの16通りあります。給付基礎日額が低い場合、保険料は安くなりますが、給付額も少なくなってしまうので、適正な額を申請するよう心掛けましょう。
年間保険料は、保険料算定基礎額(給付基礎日額×365)に、事業毎に定められた保険料率を乗じた金額となります。たとえば、建設業の事業を営む一人親方で、給付基礎日額1万円であれば、年間保険料は、365万円(1万円×365)×保険料率18/1000=6万5700円となります。

3.給付内容

一人親方等が業務災害、通勤災害に罹災した場合、次のような保険給付が受けられます。また、特別支給金が受けられる場合もあります。

◎療養補償給付(療養給付)(かっこ内は通勤災害の保険給付の名称です。以下同じ。)
業務災害または通勤災害による傷病について、病院等で治療する場合に、労災病院または労災指定病院等において必要な治療が無料で受けられます。
労災病院または労災指定病院等以外の病院において治療を受けた場合には、治療に要した費用が支給されます。

◎休業補償給付(休業給付)
業務災害または通勤災害による傷病の療養のため労働することができない日が4日以上となった場合に、休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の60%相当額が支給されます。また、特別支給金として、休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額の休業特別支給金が支給されます。
たとえば給付基礎日額1万円の一人親方が業務災害に罹災した場合、4日目から、1万円×60%=6000円(休業補償給付)、1万円×20%=2000円(特別支給金)、合計で1日当たり8000円が支給されます。

◎障害補償給付(障害給付)
業務災害または通勤災害による傷病が治った後に、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合に、障害等級に応じて、給付基礎日額の313日分(第1級)~131日分(第7級)が支給されます。
また、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合は、障害補償一時金(障害一時金)として、給付基礎日額の503日分(第8級)~給付基礎日額の56日分(第14級)が支給されます。
障害等級は法令により細かく分類されていますが、たとえば障害等級第1級は両目を失明したり、両腕を失うなど、重度の障害を負った場合です。障害等級第14級は、指を失ったり、複数の歯を欠損するなど、比較的軽微な障害を負った場合です。

◎傷病補償年金(傷病年金)
業務災害または通勤災害による傷病が療養開始後1年6か月を経過した日、または、療養開始後1年6か月を経過した後において①傷病が治っていないこと②傷病による障害の程度が傷病等級に該当することのいずれにも該当する場合に支給されます。給付内容は、第1級は給付基礎日額の313日分、第2級は給付基礎日額の277日分、第3級は給付基礎日額の245日分が支給されます。
傷病等級第1級に該当するのは、両眼を失明したり、両腕を失くした場合など、非常に重い怪我を負った場合となります。

◎遺族補償給付(遺族給付)
業務災害または通勤災害により死亡した場合に支給されます。遺族の人数によって支給される額が異なります。
遺族1人の場合、給付基礎日額の153日分または 175日分
遺族2人の場合、給付基礎日額の201日分
遺族3人の場合、給付基礎日額の223日分
遺族4人以上の場合、給付基礎日額の245日分

◎葬祭料(葬祭給付)
業務災害または通勤災害により死亡した方の葬祭を行う場合に、31万5千円に給付基礎日額の30日分を加えた額か、給付基礎日額の60日分のいずれか高い方が支給されます。

◎介護補償給付(介護給付)
業務災害または通勤災害により障害補償年金(障害年金)または傷病補償年金(傷病年金)を受給している方のうち、一定の障害を有する方で現に介護を受けている場合、介護の費用として支出した額が支給されます(ただし上限額があります)。
親族等の介護を受けている方で、介護の費用を支出していない場合か、支出した額が最低保障額を下回る場合は、一律にその最低保障額が支給されます。
上限額および最低保障額は、常時介護と随時介護の場合とで異なります。
常時介護:上限額16万5150円、最低補償額7万790円
随時介護:上限額8万2580円、最低補償額3万5400円

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