フォークリフトに関する労災事故の労災保険・慰謝料について

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フォークリフトに関する労災とは

フォークリフトは、商品を扱う様々な職場において用いられており、非常に便利な道具として活躍しています。もっとも、かなりのパワーを有する機械ですので、使用方法を誤ったり、不注意等で人体に衝突したり人体を巻き込んだりしてしまえば、大けがにつながることがあります。また、高所で作業する場合や、運転席が高いタイプの場合、墜落・転落による事故も発生することがあります。このような事故は、フォークリフトに特有のものと言え、フォークリフト事故は大きな怪我につながりやすいという特徴があることが分かります。

事業者・作業者は事故を防止するために次のような対策を講じることが望ましいといえます。
・ 作業手順書を作成する
・ 複数の作業者で荷役作業を行う場合は、作業指揮者を配置する
・フォークリフトに係る安全研修を実施する

また、労働安全衛生規則第151条の3では、フォークリフトを用いて作業を行うときには、あらかじめ当該作業に係る場所の広さ及び地形、フォークリフトの種類及び能力、荷の種類及び形状等に対応する作業計画を定める必要があるとされています。
さらに、この計画にはフォークリフトの運行経路及び作業の方法が示されていること及びこの計画を関係作業者に周知させなければならない旨定められています。

そして、フォークリフトを用いて作業を行うときは、作業指揮者を定め、その者に作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならないと規定されています。
この規則からすると、事業者は、フォークリフトを用いて荷役運搬作業を行わせるときには、作業計画を作成し、作業指揮者を選任して、その者に作業を指揮監督させなければならないとされ、この点、重要といえます。

その他、「荷役・運搬機械の安全対策について」(昭和50年4月10日付け基発第218号) 「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドラインの策定について」(平成25年3月25日付け基発0325第 1 号)などの通達において、フォークリフトに関する荷役・運搬作業において対策の推進を図るよう説明されています。

以下では、業務中にフォークリフトによる事故が発生してしまい、怪我を負ってしまった場合、その補償や賠償がどのような仕組みになっているのかを解説していきます。

労災保険について

フォークリフトによる労災事故にあってしまった場合、労災保険からの給付を受けられます。
もっとも、前提として、怪我が労災によるものであることを認定される必要があります。

要件

怪我を負ってしまったことが労働災害によるものであると認定されるためには、労働者の負傷・疾病などが、「業務上の事由」によって発生しているといえることが必要です。
そして、「業務上の事由」といえるかどうかは、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要素が含まれている事故であったかどうかによって決まります。

まず、労働者が労働関係の下にあった場合に起きた災害であれば、「業務遂行性」の要素があると判断されます。

次に、業務遂行性があることを前提として、業務と負傷の間に因果関係があるといえるならば、「業務起因性」の要素があると判断されます。
業務に関係する作業でフォークリフトを使用している際に怪我をしてしまったのであれば、業務と負傷の間に因果関係があると判断されることが通常です。

フォークリフトによる事故が発生した際は、業務以外でフォークリフトを動かすことはあまり考えられないため、これらの要件を満たすことが多いと考えられますが、休憩時間中に自ら遊びでフォークリフトを動かしていた場合や、会社の指示や許可なく無断でフォークリフトに乗車していた場合等は、これらの要件を満たさないと考えられます(故意に加害者から轢かれた場合などは、加害者との関係では加害者に直接損害賠償請求する上では業務中である必要はありません。)。

労災を認定する手続きの流れ

労災の認定は、一次的には、労災保険制度の中で行われます。
したがって、労災保険給付を担う労働基準監督署へ、申請を行うことになります。申請先は会社の所在地を管轄する労働基準監督署になります。

申請についてのルールは、厚生労働省のホームページで詳しく説明されています。
厚生労働省のホームページはこちらから

慰謝料について

労災事故にあってしまった場合、労災保険がおりることはもちろんですが、事故の発生が会社の安全配慮義務違反や被害者以外の従業員の過失によるものである場合、別途会社に対して損害賠償請求を行うことができる場合があります。その損害として大きなウエイトを占めるのが、「慰謝料」です。

慰謝料には、大きく分けて①入通院慰謝料 ②後遺障害慰謝料 ③死亡慰謝料という3種類のものがあります。

①は入通院で感じた精神的苦痛に対する慰謝料であり、入通院期間に比例して増大していくのが普通です。
②は後遺障害が残った精神的苦痛に対する慰謝料であり、後遺障害の等級の重さに比例して算出されます。
③は、フォークリフト事故によって労働者が死亡してしまった場合、本人や近親者の精神的苦痛に対し発生する慰謝料です。

例えば、フォークリフトに巻き込まれ、骨折をしてしまい、1か月の入院と5か月の通院(総治療期間半年)で、後遺障害12級が残ってしまった場合、裁判上の基準ですと、慰謝料は以下の通り算出されます。

・入通院慰謝料(①)・・・149万円
・後遺障害慰謝料(②)・・・290万円
・合計・・・439万円

具体的な慰謝料請求権の行使の方法

「会社に対して損害賠償請求を行うことができる」と言われても、具体的にどのような経過をたどるのか、イメージがわかない方もいらっしゃると思います。

労災事故に限らず、損害賠償請求を行う手段は、大きく2つに分けることが可能です。

第1に、訴訟等の法的手続きを利用する手段です。
この方法は、間に裁判所等を挟むことによって、双方の言い分が対立しても中立かつ妥当な判断を仰ぐことができたり、強制執行による解決につながったりするという利点があります。

第2に、任意交渉による解決を図る手段です。
任意交渉とは、要するに、会社に対して希望額の賠償金を払ってくれないか「お願いする」という手段です。
この手段の最大のメリットは、第三者である裁判所を通す時間がない分、迅速な解決が狙えるという点です。

弁護士に依頼するという選択肢

慰謝料を請求する方法については、先に述べた通りです。
一般的には、まず交渉をして、うまくいかなければ訴訟を検討するという流れになります。
しかし、これまで勤めていた会社に対し、ご自身で交渉するということは心理的に非常にやりづらく、損害の見積もりや法的知識といった面においても不安を感じる方が大半かと思います。
また、素人が交渉しても、まったく相手にしてもらえないケースが一定数あることも事実です。
そして、そのような場合、自分で訴訟を提起することは、より困難であると考えられます。

そこで、経験・知識ともに豊富である弁護士に交渉を依頼するという方法があります。
弁護士は、いただいた資料をもとに、賠償請求の可否、適切な賠償額を判断したうえ、会社に対する示談交渉を行うことができます。

弁護士が交渉することの強みは、法的手続きによる解決も可能であることを示すことで、無視することができないと思わせる点にあります。
弁護士に依頼することで、訴訟を起こすことのハードルが非常に下がります。
また、仮に交渉が決裂したとしても、任意交渉で争点がはっきりしていれば、ある程度整理された状態から法的手続きを始めることができるため、いきなり訴訟を選択する場合よりも迅速に解決が図れるというメリットがあります。

まとめ

この記事では、フォークリフトによる労災事故と労災保険金・慰謝料の請求方法について解説しました。内容は、以下の通りです。

①労災保険の申請は、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に対して行う。
②労災認定の要件は、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要素が含まれている事故であることである。
③労災保険とは別に、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料を請求できる場合があり、これは会社に対する請求となる。
④慰謝料請求の方法は、大きく分けて、法的手続きと任意交渉の2つがあり、弁護士に依頼をすることで、スムーズかつ十分な権利の実現を図ることができる

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