家族が亡くなってしまった方へ

大切なご家族を失われて、悲しみや寂しさでいっぱいだと存じます。まずは心よりの悔やみを申し上げます。もし労災が原因でお亡くなりになったなら、残されたご家族が補償を受けることができます。会社に責任がある場合は損害賠償を請求できます。

労災でご家族を失われた遺族は遺族給付が受けられます

会社での仕事中の事故、あるいは仕事のストレスが原因での病気で亡くなられた場合、労災保険による補償を受けることができます。亡くなられた方の配偶者や子供、両親などが受けられる補償であり、年金が受け取れます。

遺族給付が受けられる遺族の範囲

労災の遺族給付が受け取れるのは亡くなられた方の収入で生計を維持していた配偶者、子供、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。妻以外は18歳未満(正確には18歳に達する日以降に訪れる3月31日まで)か60歳以上、あるいは一定の障害の状態にあることが必要です。

遺族給付の種類

遺族給付には遺族年金と遺族特別年金、そして遺族特別支給金があります。

遺族年金

遺族給付が受けられる遺族に対して支払われる年金です。

遺族特別支給金

遺族給付が行われる際に支給される一時金です。

労働者の賃金や遺族の人数に関係なく、一律で300万円が給付されます。

遺族特別年金

ボーナスを基に計算され、支給される年金です。

遺族年金と同様に遺族の数によって支給額は変わります。

種類 詳細
遺族年金 給付基礎日額をもとに計算され、遺族給付が受けられる遺族に対して支払われる年金です。給付基礎日額とは原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額をいいます。
遺族特別支給金 遺族給付が行われる際に支給される一時金です。

労働者の賃金や遺族の人数に関係なく、一律で300万円が給付されます。

遺族特別年金 算定基礎日額を基に計算され、支給される年金です。算定基礎日額とは原則として業務上または通勤による負傷や死亡の原因が発生した日または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間にその労働者が事業主から受けた特別給与の総額を算定基礎額年額として365で割った額です。

遺族年金と同様に遺族の数によって支給額は変わります。

会社に対して損害賠償を請求できる場合も

上記の労災保険給付の他に、会社に対して損害賠償を請求することが可能な場合があります。

労災事故の発生について、会社が整備、点検を怠っていた機械で事故が起きた場合、無理な働き方を会社から強制され病気で亡くなった場合など、会社に安全配慮義務違反を問える場合は、会社に対して損害賠償の請求ができます。
また、他従業員のミスによる事故の場合も同様に請求が可能です、

労災保険の給付からは、「慰謝料」が一切支給されません。
また、「逸失利益」(将来得られるはずだったのに得られなかった収入)についても、損害の一部分しか支払われないこともあり、
不足部分を会社に対して、請求できる可能性があります。
具体的内容は、以下で説明します。

慰謝料

労災事故により労働者が亡くなった場合に支払われる慰謝料です。金額の基準は、裁判所がある程度明らかにしており、被災者の家庭での立場によって金額に差がでますが、2000万円~2800万円の範囲で認定されることが多いです。

そして、この慰謝料は、先ほど説明した労災保険の給付とは別に会社に対して請求ができます。

労災保険給付は、「慰謝料」の支給がされているわけではないからです。

死亡逸失利益

労災事故により亡くなった場合、将来得られるはずだったのに得られなかった収入をいいます。

この逸失利益は、(労災事故前の年収)×(1-生活費控除率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)で算出されます。

生活費控除率とは、亡くなったことで将来収入が失われる一方で、将来の生活費支出がなくなることを考慮して、損害額算定の際に一定割合を生活費分として控除するものです。亡くなった方の生活環境(被扶養者の人数や、男女の別等)で区別されることが多いです。数値としては、概ね0.3~0.5の範囲になる場合が多いです。

労働能力喪失期間は、原則として亡くなった時の年齢から67歳までの年数です。

ライプニッツ係数とは、将来受け取る収入を先に受け取ることができることの調整を図るために、利息分をディスカウントした数値のことです。
例えば、47歳の方の場合は、労働能力喪失期間が20年となり、利息分を年3分としてディスカウントすると、14.8775となります。

以上の計算方法に従うと、年収400万円で47歳の方だった場合、生活費控除率を0.5と捉えた場合でも、約3000万円の賠償金額に及びます。
この算定金額からも明白ですが、この逸失利益は、数千万円の賠償金やそれ以上の金額に及ぶ可能性があり、先ほど説明した労災保険の給付を大きく上回る賠償費目といえます。

そのため、労災保険の給付のみでは、「適切な賠償を受けた」とは言えない可能性が高いといえます。

労災や損害賠償には時効があります

労災の遺族給付には時効があり、一定期間を過ぎると補償を受け取ることができなくなってしまいます。亡くなられた日の翌日から5年を経過すると、労災の障害給付の請求権は消滅します。一方、葬祭料については亡くなった日の翌日から2年を経過すると時効消滅します。各種給付により時効の期間が異なりますので、注意が必要です。

損害賠償請求の時効は法的構成により異なります。

安全配慮義務違反に基づく法的構成の場合、債務不履行に基づく損害賠償請求として債権一般の消滅時効にかかります。

民法改正に伴い、2020年4月1日以降は5年、2020年3月31日までは10年です。2020年3月31日までは債権一般の消滅時効の期間については「権利を行使することができるとき」から10年とされていました。

2020年4月1日以降について5年の起算点は「権利を行使ですることができることを知った時」からで、労災事故があった日などが適用されます。また「権利を行使することができる時」から10年間行使しないときにも時効消滅します(改正民法166条 なお、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の場合はこれが20年間となります 改正民法167条)。

事故でない場合など、時効の起算日の判断が分かれるケースもあります。

不法行為に基づく法的構成の場合には、不法行為に基づく損害賠償請求権として、被害者が損害および加害者を知った時から3年間行使しない時 (人身傷害の場合は5年)、不法行為の時から20年間行使しない時には時効消滅するとされます(改正民法724条 724条の2)。

ぜひ弁護士にご相談下さい

ここまで労災保険の給付とは別に、会社に対して賠償金額が請求できる可能性があることを説明しました。

賠償請求するためには、前提となる会社の責任の有無の判断、会社との交渉という精神的なストレス、適切な賠償か否かの判断やその調査手段等々、多くの不安点があるといえ、ご遺族だけで会社に対して請求するのは、ハードルが高いと思います。

そこで、経験豊富な弁護士に依頼して、会社に対する損害賠償請求の可否の検討や損害賠償の請求を行ってもらうという選択肢があると思います。

会社によっては、自社の保身のために、発生した労災事故について、亡くなった方の一方的な過失であると主張することもあります。
しかし、死亡事故のような大きな労災事故が不幸にして発生してしまった場合、会社の安全管理に何らかの不備が認められることが非常に多いです。完全な被災労働者の不注意・自己責任だけで重大災害が起こるということはないからです。

弁護士は、労災事故の賠償やその手続についても熟知しており、会社との交渉から裁判のみならず、それらで用いる証拠の収集等についても、ご依頼いただくことで一挙に担い、有利に進めることができます。

また、先ほど説明した時効の問題もあるため、お辛いとは思いますが、早めに行動することが大切です。

労災事故により、お悩みの方は、ぜひ一度、ご相談下さい。