労災による後遺障害の等級認定方法は?
労災による病気やケガで後遺症が残ってしまった場合には、労災保険から程度に応じた補償が受けられます。補償の内容は障害等級によって定められているため、補償給付を受けるためにはまず、残った障害が何級に該当するか認定を受ける必要があります。必要な資料を揃えて労働基準監督署に提出することで、障害等級の認定が受けられます。
後遺症現在の等級認定の流れ
労災で後遺障害が残った場合の障害認定までの流れは、以下の通りです。
①労働災害発生
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②療養
労災で生じた病気やケガについて、通院や入院により必要な治療を受けます。治療中は療養給付が受けられます。
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③症状固定
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④障害給付の請求
請求書に事業主証明を受け、労働基準監督署へ提出します。診断書やレントゲン写真なども必要です。同一の事由により障害厚生年金や障害基礎年金などの支給を受けている場合は、支給額が証明できるものの提出を求められることがあります。
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⑤必要に応じた症状確認
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⑥障害等級の認定
この一連の流れを踏むことで、ケガや病気の症状がどの程度残ったのかが正式に認められ、労災保険から必要な給付を受けられます。ただし、認定過程で書類を揃えたり、主治医の診断書を取得したりする必要があるため、スムーズに進めるには準備が欠かせません。特に、症状固定の段階で後遺障害が明確に残るようなら、できるだけ早期に書類作成を始めることが大切です。
ポイント
・療養中の記録(通院日数や治療経過は詳細に記録しておく)
通院のたびに、医師の診察内容や検査結果、リハビリの状況などをメモに残しておくと便利です。後日、後遺障害の認定手続きを進める際に「いつ、どのような治療を受けたか」を正確に説明できるようになるため、書類作成や医師への相談時に非常に役立ちます。通院先が複数あった場合は、それぞれの病院名や受診日、処方薬などもまとめて記録しておくことで、手続き全体をスムーズに進めることができるでしょう。
・事業主への連絡(請求書の証明など、提出前に手続きが必要)
労災申請には、事業主からの証明が必要となる書類が含まれます。事故発生時の状況や業務との因果関係などを明確にするうえで、事業主と連携を取ることは欠かせません。特に、複数の部署を経由して書類を発行してもらう場合などは、手続きに時間がかかるケースもあります。事業主とスムーズに話を進めるためにも、事故直後からやり取りや連絡内容を記録し、必要に応じて再度確認を取るようにしましょう。
・症状固定の見極め(医師と十分に相談し、適切なタイミングを把握)
「症状固定」とは、治療を続けても症状がそれ以上は改善しない状態を指します。症状固定の時期は、後遺障害の有無や程度を判定するための重要なタイミングです。早すぎる症状固定では十分な治療が受けられない恐れがありますし、遅すぎると手続きが進まないまま治療費などの問題が発生する可能性があります。主治医とよく相談しながら、負担にならないペースで治療を進めることが大切です。
・必要書類の確認(障害厚生年金や障害基礎年金の受給状況がある場合は、追加資料を準備)
労災保険以外にも、障害年金などの制度をすでに利用している場合は、その受給状況の証明を求められることがあります。具体的には、年金証書や年金の振込通知書、受給額を証明する書類などです。どの段階でどの書類が必要かはケースによって異なるため、あらかじめ役所や専門家に確認しておくと安心です。特に、障害年金の審査と労災の審査では基準や書類のフォーマットが異なることもあるため、しっかりと必要書類を洗い出しておきましょう。
これらの流れとポイントを理解しておくと、後遺症の等級認定手続きがスムーズになりやすいです。とはいえ、書類の準備や事業主とのやり取りには時間と労力がかかるため、思わぬトラブルを避けるためにも早めの情報収集や専門家への相談が重要となるでしょう。特に、負傷後の治療で心身ともに負担が増えているときは、書類管理や手続きを一人で抱え込まないようにすることが大切です。必要があれば、経験豊富な弁護士や社労士などに協力を仰ぎ、落ち着いて準備を進めることで、より確実に適切な障害等級の認定を受けられるようにしましょう。
障害等級の認定を受けるのに必要な資料
労災の後遺障害について等級認定を受けるためには以下の資料の提出が求められます。
後遺障害診断書
労災保険の後遺障害認定用の書式で作成した診断書で、主治医等に依頼して準備します。治療内容や経過、障害の状態の詳細(図で示せる場合は図解)、関節運動範囲などが記入されます。
医師による意見書
残った障害が生活や仕事にどのような影響を与えるかについて、医師の見解を示す書類です。医学的な視点から書かれるため、後遺障害の有無や程度を客観的に伝える重要な役割を担います。
申請の際の必要書類ではありませんが、後遺障害等級認定のために、申請の際に添付することもあります。
レントゲン写真やMRI・CT画像
負傷の状態を客観的に示す資料です。画像が明確なほど説得力があり、認定に必要な参考データとして活用されます。
必要資料を揃えるには時間がかかることも
これらの書類を準備するには思っている以上に時間がかかる場合があります。例えば、主治医の都合によって診断書作成に数週間以上を要することも少なくありません。また、医師による意見書の作成には診療科の専門性が関係する場合があり、依頼先を選ぶ際に迷うこともあるでしょう。
さらに、レントゲンやMRI、CTなどの画像資料は、検査を受けるタイミングや医療機関の混雑状況によってはスムーズに入手できないことがあります。医療機関によっては撮影から画像の受け取りまでに日数がかかるため、後回しにしていると提出期限に間に合わない可能性も否定できません。
資料を揃える際のチェックポイント
・担当医との連携を早めにとる
・資料作成の依頼手順を確認する
・提出期限から逆算してスケジュールを組む
早い段階から準備を開始することで、後遺障害の等級認定をスムーズに進められます。必要書類を確実に揃えておくことは、認定結果にも大きく影響するため、気になる方は早めに行動しましょう。
労災の障害等級認定が認められなかった場合は?
労災で被災された方にとって、障害等級認定が適切に行われるかどうかは将来の生活設計に大きな影響を与える重大な問題です。ところが、実際に申請してみると「思っていたほどの等級が認められなかった」「主治医の所見が十分に考慮されていない気がする」などの不満や不安を持たれる方は少なくありません。そうした場合の代表的な救済手段として挙げられるのが、審査請求です。審査請求とは、労災保険の給付決定や障害等級認定に不服があるときに、その処分の見直しを求めるための正式な手続きであり、労働基準監督署の決定が妥当かどうかをもう一度検討してもらう場を得ることができます。
審査請求を行う際には、以下の点が重要となります。
・期限の確認
処分を知った日の翌日から3か月以内に行う必要がある
・提出先の特定
処分を下した労働基準監督署を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官
・書式の入手
労働基準監督署などで配布されている「労働保険審査請求書」を使用
・費用の有無
審査請求自体には費用がかからない
このように、審査請求は手数料などの負担が基本的に不要であり、書面または口頭で手軽に申立てができるというメリットがあります。一方、医師による追加意見書やレントゲン・MRIなどの資料を改めて用意しなければならない場合もあり、書類準備には時間がかかる可能性もあります。審査請求後は、労働基準監督署が意見書を作成し、審査官が改めて調査を行ったうえで判断を下す流れですが、結果が出るまでには通常数か月単位の時間がかかることが多いとされています。それでも、認定等級が見直されるチャンスを得られる点は大きなメリットです。もし認定結果に大きな疑問をお持ちでしたら、こうした手続きを検討してみる価値は十分にあるでしょう。
に大きな疑問をお持ちでしたら、こうした手続きを検討してみる価値は十分にあるでしょう。
審査請求の流れ
審査請求は「具体的にどのようなステップを踏むのか分かりにくい」という声が多いため、ここでは主な流れを順を追って整理します。まず、処分に不服があることを明確にすることが大前提です。障害等級の認定日や通知書の日付をしっかり確認し、処分を知った日の翌日から3か月という請求期限を守るようにしましょう。次に、労働基準監督署や都道府県労働局の窓口で「労働保険審査請求書」を入手し、下記の内容を記入・準備していきます。
・不服の根拠(どの部分がどう不当なのかを具体的に記載)
・証拠資料の添付(医師の所見や診断書、レントゲン・MRI画像など)
・書面または口頭で提出(不備がないか再チェックしつつ、受付窓口へ提出)
この審査請求が受理されると、労働基準監督署が自らの決定理由をまとめた「意見書」を用意し、それを踏まえて都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官が調査を行います。
調査は書類ベースで進められますが、場合によっては被災者本人や家族に聞き取りをすることもあります。こうした調査には数か月を要することが一般的で、結果が出るまである程度の時間を要するため、気長に待つ姿勢も必要となるでしょう。
その後、審査官が「労働基準監督署の判断に違法または不当な点がある」と認めれば、障害等級が変更される可能性があります。一方、「問題はない」と判断された場合は審査請求が棄却となり、認定結果は維持されます。仮にこの判断に対しても納得できない場合は、さらに上級機関へ申し立てを行う再審査請求という手段が残されているため、諦める前にもう一度可能性を模索することができます。こうした二段階の不服申立制度を活用し、自身のケガや後遺障害の状態を正しく評価してもらう機会を得ることが、将来の補償額を大きく左右する要因となるでしょう。
再審査請求
審査請求の結果にも納得がいかない場合には、再審査請求という選択肢があります。これは、労働保険審査会(東京)に対して行う手続きで、審査請求の決定書を受け取ってから60日以内に申し立てることが可能です。再審査請求では、審査請求の過程で集められた資料の開示を請求できる場合があるほか、新たな証拠の提出も認められるため、まだ十分に示せていなかった医学的根拠や医師の意見を追加で補強することで、認定結果が覆る可能性が高まる場合があります。しかし、そうした追加資料がないと、統計上でも成功率は低く、労働基準監督署の判断を覆すのは容易ではないのが実情です。
労災の後遺障害の等級認定は弁護士が承ります
労災の後遺障害の等級認定で提出しなければならない書類が数多く存在することからも分かるように、実際の手続きは思った以上に複雑です。後遺障害診断書や医師による意見書、画像資料などに加え、申請書類一式を整えるには相応の手間と時間を要します。さらに、慣れない用語や手順に戸惑うこともあるでしょう。こうした負担は、怪我や病気で身体が十分に回復していない方にとっては非常に大きなストレスとなりがちです。
そうしたときには、ぜひ当事務所にご相談ください。私たちは後遺障害認定に関する実績を有しており、労災保険制度の理解も深い弁護士がサポートいたします。書類の不備や提出タイミングの遅れなどを防ぎながら、スムーズに手続きを進めるためのアドバイスを行い、必要に応じて代理での書類作成をサポートすることも可能です。
当事務所のサポート内容
・後遺障害診断書などの書類チェック(提出前に漏れや記入ミスを確認)
・医師とのやり取りのアドバイス(不足情報の取り寄せ方法や追加記載依頼)
・労働基準監督署への対応(問い合わせ内容への回答や追加書類請求への迅速な対応)
・認定結果の見直し(万一認定等級に納得できない場合の不服申立サポート)
専門家に依頼することで、労災保険の規定や必要書類に関する知識を効率よく活用でき、結果としてご自身の負担も大きく軽減できるでしょう。複雑な手続きを一人で抱え込むよりも、的確なアドバイスを得ながら進めることで精神的な安心感も得られます。
「後遺障害の認定を申請したいが、どこから手をつけていいのか分からない」「医師とのコミュニケーションをどう進めればいい?」など、少しでもお悩みがあれば、どうぞお気軽にご連絡ください。私たち弁護士がお力になれるよう全力で対応いたしますので、まずはお電話やメールフォームからご相談いただければと思います。