労災の後遺障害等級13級で受け取れる補償と弁護士に依頼するメリット
1.後遺障害等級13級とは
労災保険制度における後遺障害等級13級は、外見上は軽度と見られがちでも、生活や仕事に一定の支障をもたらす可能性がある等級です。
業務中や通勤途上の事故が原因で生じたケガが治癒(症状固定)した後も、視力低下や鼻の欠損、胸腹部臓器の機能障害など、さまざまな症状が残る場合に認定されます。
たとえば、一眼の視力が0.6以下となったり、まぶたに部分的な欠損が残るケースなどが代表例です。数字上では「比較的軽度」と位置づけられていますが、本人にとっては肉体的・精神的な負担が大きく、仕事上の制約や日常生活の質の低下につながることもあります。
そこで、まずは13級がどのような障害を指すのかを正しく把握し、自分の症状に合致していないか確認することが重要です。
また、認定を受けるためには症状固定後の正確な診断書や検査結果を労働基準監督署に提出する必要があるため、早めの準備が欠かせません。
以下の箇条書きに、13級が想定する障害の特徴と、認定の際に注意すべきポイントをまとめました。
認定されやすい代表的症状
一眼の視力低下(0.6以下)
鼻やまぶたの部分欠損
胸腹部臓器の軽度機能障害
一手の小指の可動域制限等
一下肢を一センチメートル以上短縮
本人に及ぶ影響の例
日常生活の負担増(視野狭窄や呼吸のしづらさなど)
仕事上のパフォーマンス低下や職種変更リスク
慢性的な痛みや違和感によるストレス
このように、13級は「軽度」というイメージに惑わされず、専門医の診断や適切な書類準備を通じて、自らの障害を正しく評価することが大切なのです。
1-1.認定基準と該当する症状
後遺障害等級13級の認定基準には、一見して周囲にその支障が気づかれにくい障害が多く含まれます。
具体的には、一眼の視力が0.6以下や、正面以外を見たときに複視が生じる場合、両眼のまぶたに一部欠損がある場合、あるいは鼻を欠損して著しい機能障害が出る場合などが典型例です。
胸腹部臓器の軽度な障害も該当し、呼吸や消化にわずかながら支障が出るケースが認定されることもあります。
これらは外見上の変化が少ないため、「本当に13級なのか」と周囲や保険会社から疑念を持たれる場合もあります。
そのため、認定手続きでは症状の客観的証拠が欠かせません。
症状固定後、医師から詳細な診断書を作成してもらい、レントゲンやCT、MRI、視力検査などの結果を添付することで、労働基準監督署に後遺障害の存在を的確に訴える必要があります。
さらに、まぶたや鼻の欠損など、外見的特徴がある場合でも、生活上の支障度合い(目の乾燥や呼吸の苦しさなど)が診断書に明確に記載されていないと、適正な等級を得られないおそれがあります。
以下では、認定基準や症状に関する注意点を整理しました。
主な認定症状
一眼の視力が0.6以下
一眼に半盲症や視野変状が残る
両眼のまぶたの一部欠損やまつげ脱毛
鼻欠損による機能障害
一手の小指の末節骨(第一関節より先端側の指骨)の半分以上を失い、又は中手指節関節(付け根側の関節)若しくは近位指節間関節(真ん中の関節)に著しい運動障害を残すもの
一下肢の長さが他方と比較して1cm以上短縮する。
注意すべき点
症状の持続性を示す通院記録の整備
視力・機能検査など客観的数値の提出
医師に生活上の不便を具体的に伝える
こうした手順を踏むことで、13級に該当する症状が適切に評価されやすくなります。
2.労災保険による補償内容
後遺障害等級13級が認定された場合、労災保険から支給される補償は基本的に「一時金」を軸として構成されます。
これは、被災者が負った障害の程度に応じて給付基礎日額をもとに算出される仕組みで、13級なら給付基礎日額の156日分を受け取れる点が大きな特徴です。
さらに、上乗せ給付として「障害特別支給金」や「障害特別一時金」も支給対象となります。
ただし、こうした補償を確実に受け取るためには、労働基準監督署へ提出する書類にミスや不足がないことが不可欠です。
労災事故が起こった経緯や、業務・通勤との因果関係、さらに症状固定後の後遺障害の程度など、すべてをきちんと証明しなければなりません。
会社側の協力が得られなかったり、保険会社とのやり取りが滞ったりすると、支給が大幅に遅れるケースもあります。
以下に、13級認定時に受け取れる主な補償内容と、注意すべきポイントをまとめました。
主な給付内容
障害(補償)給付の一時金(給付基礎日額×156日分)
障害特別支給金(一律14万円)
障害特別一時金(給付基礎日額×101日分)
申請時の注意点
事故状況報告書や診断書の不備を防ぐ
給付基礎日額の算定に影響する給与明細の確認
会社が労災認定を渋る場合は早めに専門家へ相談
一時金を受け取れることは大きな助けになりますが、それだけでは長期の治療や将来の生活を十分に支えきれない可能性もあるため、次章以降で解説する慰謝料や逸失利益の請求を含め、トータルで考えることが重要です。
2-1.障害(補償)給付の一時金
後遺障害等級13級に認定されると、まず労災保険の「障害(補償)給付」として一時金が支給されます。
これは給付基礎日額×156日分をベースに算出されるため、給与や手当の状況によって支給額に差が出る仕組みです。
たとえば給付基礎日額が6,000円なら、単純計算で6,000円×156日=93万6千円程度が目安となります。
ただし、この一時金は後遺障害の存在に対する「補償の一部」であり、長期的に発生する収入減や治療費の負担を完全にはカバーしにくい点を理解しておく必要があります。
特に、軽度と見られがちな13級でも、視力低下、鼻・まぶたの機能障害、小指の可動域制限、下肢の短縮に伴う歩行障害などによって職務変更を余儀なくされる場合があり、その際の減収リスクは侮れません。
以下では、この一時金を確実に受給するためのポイントを整理しました。
給付を受ける手順
事故後に会社へ労災の届出を行い、労働基準監督署へ必要書類を提出
症状固定後に医師から後遺障害診断書を作成してもらう
書類審査を経て13級が認定されれば、一時金が支給
確認しておきたい点
自身の給付基礎日額は正しく算定されているか
賃金台帳や給与明細に誤りがないか
申請書の書き方や提出期限を守れているか
こうした手続きを円滑に進めるためには、書類の内容確認を入念に行い、会社や医療機関と連携を取りながら進めることが大切です。
もしも不当な減額が疑われる場合や、認定手続きがスムーズに進まないときは、労災に詳しい弁護士などに早めに相談することをおすすめします。
2-2.障害特別支給金と障害特別一時金
13級の後遺障害が認定された場合、障害(補償)給付の一時金だけでなく、「障害特別支給金」および「障害特別一時金」の上乗せも受けられます。
特別支給金は一律14万円と定められており、特別一時金は給付基礎日額×101日分を基準に算出されるため、障害(補償)給付と合わせるとまとまった額になるケースが多いです。
とはいえ、これらはすべて「一時金」という性質上、将来的な生活費やリハビリ費用を長期的にまかなうには限界があります。
13級という数字だけで「それほど深刻ではない」と見られがちですが、視力や呼吸機能に不安を抱えたまま働くことがどれだけストレスになるかは当人にしか分からない部分も多いでしょう。
そのため、上乗せ分をどう使うかも含めて、きちんと計画を立てることが重要です。
以下に、障害特別支給金と障害特別一時金のポイントをまとめました。
支給金の仕組み
障害特別支給金:13級なら14万円が一律で上乗せ
障害特別一時金:給付基礎日額×101日分を加算
留意点
申請手続きは障害(補償)給付と同時に行うのが一般的
給付基礎日額が高い人ほど特別一時金も増える
一度に支給されるため、将来の資金計画が必要
これらの制度を正しく活用することで、13級でも一定額の補償を得られますが、実際には「それだけで十分」と言い切れないケースが多々あります。
次の章では、労災保険の枠を超えた損害賠償や慰謝料・逸失利益について解説します。
3.後遺障害13級における慰謝料と逸失利益
労災保険による一時金や特別支給金を受け取れるのは大きな助けですが、後遺障害等級13級の障害が残った場合、治療費やリハビリ費用、働き方の制限による収入減など、様々な負担が今後も継続する可能性があります。
そこで、事業主に安全配慮義務違反があったり、他社の過失で事故が起きたと認められる場合には、民事上の損害賠償として「慰謝料」や「逸失利益」を追加で請求する道が考えられます。
ただし、こうした請求はすべてのケースで成立するわけではなく、事故の発生原因や被災者自身の過失の有無、労災保険との調整など、多角的な検討が必要となります。
万一、会社側や保険会社から「13級程度なら大きな障害ではない」と低い評価を押し付けられれば、本来得られるはずの賠償を見逃してしまう恐れがあります。
以下に、慰謝料と逸失利益に関する概略を示します。
慰謝料
精神的苦痛に対する補償
13級の相場は180万円程度と言われる+症状固定までの慰謝料が加算される。
個々の事故状況・過失割合により増減
逸失利益
将来の収入減や労働能力の低下を金銭評価
13級の労働能力喪失率は9%が一般的
年収×喪失率×ライプニッツ係数で算定
労災保険だけでは足りない部分を補う手段として、こうした民事請求を検討することが、結果的に被災者の経済的安心につながるケースも多いのです。
3-1.慰謝料の相場と計算方法
後遺障害等級13級が認定されると、日常生活や仕事に一定のストレスや不便を抱えることになります。
そこで民事上の損害賠償として請求できるのが慰謝料ですが、その相場は180万円程度とされることが多いです。
また、これに加えて症状固定まで(治療期間中)の慰謝料も加算されます。
ただし、あくまで目安であり、実際には事故の原因や被災者の年齢、職種、生活への影響度など、さまざまな要素が勘案される場合もあります。
慰謝料の計算にあたっては、会社側や保険会社から提案される金額と裁判所の示す基準(いわゆる赤い本・青い本)との間に差がある可能性が高いため、提示額が妥当かどうかの判断は簡単ではありません。
会社側や保険会社から示談金が提示されても、それが本当に適正水準かどうかは、専門知識がないと判断しづらいのが現状です。
以下に、慰謝料を検討する際に押さえておきたいポイントを挙げます。
チェックすべき要素
症状の内容(視力の低下、下肢の短縮など)
事故の態様(過失がある場合は、減額されます。)
通院の内容(通院頻度や治療の経過)
相手の提示内容(裁判基準との乖離の程度)
保険会社の示談案は低めの金額から始まることが多い
書面で提案された金額に即応じず、比較検討する
必要に応じて専門家の意見を求める
13級とはいえ、本人が受ける苦痛は大きい場合がありますので、安易に「軽度だから」と流されず、適正な基準での算定を目指すことが重要です。
3-2.逸失利益の算出方法と労働能力喪失率
後遺障害等級13級では、労働能力喪失率が9%と設定されるのが一般的です。
これは、将来にわたって就労能力が9%分減少すると見なし、年収をもとに計算する仕組みになっています。
具体的には「年収×0.09×ライプニッツ係数」で算出され、ライプニッツ係数は被災者の年齢や就労可能年数に応じて変わるため、20歳と50歳では金額に大きな違いが生じます。
たとえば、年収400万円で労働能力喪失率9%、残り20年働く計算だと仮定すると、400万円×0.09×ライプニッツ係数(約12.462など)=約448万円というイメージです。
しかし実際には、「本当に9%程度の損失なのか」「被災者の職種は視力低下に深刻な影響を受けるのではないか」といった個別事情が考慮される場合もあります。
視力や呼吸機能が鍵となる仕事なら、9%より大きなダメージとみなされる可能性もあるでしょう。
以下に、逸失利益を検討する際のポイントを示します。
検討事項
自分の職種・仕事内容に障害がどう影響するか
現在の年収や昇給見込み、ボーナスなどの有無
定年後も働く可能性の有無(就労延長)
立証の工夫
医師の所見や検査結果で具体的症状を明確化
職場での負担増や作業制限を示す客観資料
年齢・家族構成など将来的な経済的負担の説明
こうした細かい立証を怠ると、保険会社側から過小評価されるケースがあるため、将来の収入にかかわる重大な問題として丁寧に準備すべきです。
4.弁護士に相談するメリット
後遺障害等級13級は「軽度」と扱われがちですが、実際には生活や仕事への負担が大きく、労災保険から支給される一時金だけでは今後のリスクをまかなえない場合が少なくありません。
さらに、慰謝料や逸失利益をめぐる交渉では、会社や保険会社が独自の基準で金額を低く見積もる可能性も十分に考えられます。
そこで、こうした不利を回避するために有効なのが、弁護士への相談です。
弁護士に依頼すれば、労災保険の煩雑な手続きから保険会社との示談交渉、さらには民事訴訟も含めた包括的な対応を代行してもらえます。
自力での対応は時間も労力もかかり、後遺障害の治療やリハビリをしながら進めるには限界があるでしょう。
その点、法律や医療の知識を兼ね備えた専門家を味方につけることで、適切な書類作成と根拠の提示が可能となり、正当な補償を得やすくなるわけです。
以下に、弁護士に相談する大きなメリットをまとめました。
手続きの簡略化
労働基準監督署への申請書類や証拠資料を整備
会社や保険会社とのやり取りを代理
ストレス軽減と手続き漏れ防止
交渉力の強化
保険会社の低額提示に対し、裁判例や損害賠償基準をもとに反論
会社側と対立する場合は法的観点で協議を進行
訴訟に至っても必要な証拠を整理・提出
専門家を介すれば、被災者の負担が軽減されると同時に、トータルの補償額が増える可能性が高まります。
4-1.適正な補償を受けるためのサポート
弁護士は、まず被災者が抱える後遺障害の症状や業務内容、収入状況などを総合的にヒアリングし、労災保険だけでなく慰謝料や逸失利益の請求を含めた最善策を提示してくれます。
13級という数字だけにとらわれるのではなく、実際の生活上の不都合や職場での制約を見極め、ケースによっては「12級やそれ以上に該当しないか」と再検討することもあるのです。
特に、保険会社から示談金を提示される場合、初回の金額は低めに設定されるのが一般的です。
そこへ弁護士が介入し、過去の判例や弁護士独自の算定基準をもとに「13級でもこれだけの障害があり、収入減や苦痛が相当生じている」と論理的に主張すれば、相手側は簡単に低額を押し通せなくなります。
以下に、弁護士サポートの実例を挙げてみます。
診断書の再検証
痛みや視野狭窄など、医師が見逃している可能性をチェック
必要に応じて追加検査や専門医の意見書を取得
労災保険手続きの補強
会社が消極的な場合、労働基準監督署との連絡を代行
給付基礎日額の算定ミスや提出漏れを防ぐ
示談・訴訟対応
保険会社との交渉を代理し、妥当な補償額を獲得
合意が得られない際は訴訟手続きも視野に
こうして被災者が十分に説明できない部分を補い、納得できる補償を確保していくのが弁護士の役割です。
4-2. 交渉や交渉や手続きの代行による負担軽減
労災事故で後遺障害が残った場合、被災者は治療やリハビリに時間と体力を費やしながら、保険会社や労働基準監督署、会社側とのやり取りもこなさなければなりません。
後遺障害等級13級とはいえ、視力や胸腹部機能に支障がある状態で膨大な書類を準備し、示談交渉で反論を重ねるのは大変な負担でしょう。
弁護士を依頼すれば、こうした作業の大部分を代行してもらい、被災者は自身の体調管理と生活再建に集中できます。
交渉においては、会社や保険会社が「13級なら大した損害ではない」と言ってきた場合でも、弁護士が裁判例や医学的知見を示し、障害の深刻さを具体的に説明できます。
また、労災保険の給付や特別支給金の申請漏れがないか、書類の書き方に誤りがないかといったチェックも的確に行うため、申請が遅れたり減額されたりするリスクを抑えられるのです。
以下に、代行業務の一例を整理します。
書類作成代行
後遺障害診断書の補足説明作成
労災保険申請や証拠資料の整理
会社とのやり取りを代理して事実関係をまとめる
示談交渉の代理
保険会社の担当者と連絡を取り合い、相場を踏まえた金額を主張
不当な減額提案や時間稼ぎを防止
必要に応じて訴訟手続きを準備
このように、専門家のサポートを得ることで心身への負担が軽くなるだけでなく、結果的に受け取れる補償総額が大きくなる可能性も高まります。
深刻な後遺障害の不安を抱える方ほど、早期に相談するメリットは大きいと言えるでしょう。
5. 当事務所のサポート内容
当事務所としては、後遺障害の申請についてサポートします。
後遺障害の等級が認定されるかどうかで補償の内容は、大きく変わります。
適切な認定を受けるためには、労災保険が定める後遺障害の内容を理解した上で、診断書の記載内容等を確認し、認定機関(労働基準監督署)にアピールをする必要があります。
当事務所としては、専門的な視点から診断書等の書面を確認し、認定機関にアピールできるように、後遺障害の等級認定をサポート致します。
また、後遺障害等級が確定した後、会社への損害賠償請求も視野に入れている場合は、その点についても専門的な視点から、本人では難しい、証拠の収集や会社との賠償の交渉等を対応させていただくことが可能です。
そのため、後遺障害の申請や会社に対する損害賠償を希望されている方は、当事務所までご相談ください。