Q 労災事故で死亡した場合の逸失利益とは何ですか?
A 「逸失利益」とは労災事故による後遺障害や死亡が原因で得られなくなった収入に対する賠償のことです。
- 後遺障害による逸失利益を後遺障害逸失利益、死亡による逸失利益を死亡逸失利益といいます。
- 逸失利益の計算式
(後遺障害逸失利益)
基礎年収×労働能力喪失率×稼働年数に対応するライプニッツ係数
(死亡逸失利益)
基礎年収×稼働年数に対応するライプニッツ係数×(1―生活費控除率)
それぞれの項目について詳しく解説していきます。
基礎年収
基礎年収とは、逸失利益の算定の基礎となる本人の年収額です。原則として、労災事故の前年の源泉徴収票の金額により算出されます。将来の昇給について、給与規定等から昇給が確実に見込まれる場合には、考慮されることもあります。
労働能力喪失率
労働能力喪失率とは、労災事故によりどれくらい労働能力が失われたかをパーセンテージで表した数値です。労働能力喪失率は、第1級から第14級までの障害等級に応じて定められています。たとえば、労災事故により片手の指を1本切断することとなった場合、指の種類にもよりますが、第9級~第12級のいずれかに該当すると考えられます。
(労働能力喪失表)
障害等級 労働能力喪失率
第1級 ・・・100%
第2級 ・・・100%
第3級 ・・・100%
第4級 ・・・92%
第5級 ・・・79%
第6級 ・・・67%
第7級 ・・・56%
第8級 ・・・45%
第9級 ・・・35%
第10級 ・・・27%
第12級 ・・・14%
第13級 ・・・9%
第14級 ・・・5%
稼働年数に対応するライプニッツ係数
◎稼働年数
稼働年数は、後遺障害によって労働能力が喪失してしまった期間のことです。原則として、治療による症状の改善が見込めなくなった日(症状固定日)から67歳までとなります。
◎ライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは、将来得られる収入を現在価値に割り引くために計算に用いる係数です。逸失利益の賠償では、将来得られる収入を一括して受け取ることとなり、そのまま受け取ってしまうと運用利益分だけもらいすぎになっていると考えられるので、もらいすぎとなっている分を差し引くために係数を掛けて調整します。
なお、民法改正に伴い法定利率が変更した影響で、2020年3月31日以前に発生した事故と、2020年4月1日以降に発生した事故とでは、計算に用いられるライプニッツ係数が異なります。
生活費控除率
生活費控除率とは、生きていれば発生したはずの生活費が発生しないこととなりますので、収入から生活費分を控除するために用いられる数値のことです。
控除する生活費の割合は、女性の場合は3割、男性の場合は5割、また一家の支柱の場合、被扶養者が1名のときは4割、2名のときは3割といったように、ある程度類型化して決められていますが、個別事情によって修正されることもあります。
- 具体例
現在40歳で年収400万円の男性が、障害等級8級の後遺障害を負った場合の逸失利益を計算してみます。稼働年数は67歳までの27年間、稼働年数に対応するライプニッツ係数は18.327となり、逸失利益は、
400万円×45%×18.327=3298万8600円となります。
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