Q 労災事故の慰謝料(損害賠償)の相場はどれくらい?

A 慰謝料は、主に入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料に分けられ、それぞれで金額の相場があります。
1.労災事故における慰謝料とは

労災事故にあってしまった場合、労災保険による補償が受けられることを知っている方は多いと思います。
労災保険は、原則として、一人でも労働者を使用する場合、どんな事業であっても適用があります。
労災保険による補償・給付にはさまざまな種類があり、労働者が労災によって負った障害を治療するための費用や、休業を余儀なくされてしまった間のお給料などが賄われます。
さらに、労災事故の発生が会社の安全配慮義務違反や被害者以外の従業員の過失によるものである場合、労働者は、別途会社に対して損害賠償請求を行うことができる場合があります。
上記の過失が認められれば、会社は法律上、労働者に対して賠償責任を負いますから、対応が必要となります。
その賠償の内容は、慰謝料、逸失利益、休業損害等に分かれます。今回の記事では、「慰謝料」について解説していきます。
慰謝料は、主に、①病院に行かなければならなくなったことに対する慰謝料(入通院慰謝料)、②後遺障害が残存してしまったことに対する慰謝料(後遺障害慰謝料)、③亡くなってしまったことに対する慰謝料(死亡慰謝料)に分類でき、いずれも精神的苦痛を慰謝するものと考えられています。

2.入通院慰謝料の相場

入通院慰謝料は、労働災害にあってしまった被害者が、病院に行かなければならなくなったことに対する慰謝料です。
入通院慰謝料の金額については、交通事故事案を前提にしているものではありますが裁判上確立した基準があり、その基準を前提に労災事案の場合にも金額の算定をされることが多く、入院・通院期間と日数を参照して、その額が決まります。
基本的に、入院・通院期間が長くなればなるほど、慰謝料の額も比例して増大していきます。
例えば、入院1か月、通院半年を要した場合、裁判上の基準によって算出した入通院慰謝料の額は、153万円となります。
ただし、実際には、判決を獲得する手間や費用、所要時間を考慮し、裁判上の基準に近接した額で和解をして、早期に解決を図ることもあります。

3.後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料とは、労災事故により後遺障害が残存してしまったことに対する慰謝料です。
後遺障害が残存しているか否かは、医師の診断を受けたうえ、認定を受けるという流れで判断されるのが通常です。
後遺障害には、1~14級の等級が定められており、1級から順に重いものとされています。
そして、入通院慰謝料と同様に交通事故事案を前提にしたものではありますが、労災においても同様に考えられることが多く、等級に応じて裁判上確立した慰謝料の算定基準があります。
具体的には、例えば、1級(両目の失明等)で2800万円、7級(片目の失明等)で1000万円、14級(しびれなどが取れなくなった場合等)で110万円と定められています。
その他、各等級ごとに、後遺障害の重さに比例する形で、慰謝料額が定められています。

以下は、後遺障害の等級と慰謝料額の一覧となります。

第1級 2800万円
第2級 2400万円
第3級 2000万円
第4級 1700万円
第5級 1440万円
第6級 1220万円
第7級 1030万円
第8級 830万円
第9級 670万円
第10級 530万円
第11級 400万円
第12級 280万円
第13級 180万円
第14級 110万円
4.死亡慰謝料について

死亡慰謝料とは、死亡に伴う精神的苦痛を慰謝するものです。
死亡慰謝料は、労災にあってしまった被害者本人が亡くなってしまっている場合に発生するものですので、被害者本人に代わって、遺族が請求することとなります。
死亡慰謝料にも、これまで紹介した他の慰謝料と同様に、裁判上での基準があります。そして、その額は、亡くなってしまった方の立場によって少し変わります。
具体的には、①被害者が一家の支柱(被害者の家族が主に被害者の収入で生活していた場合)である場合は、2800万円、②被害者が一家の支柱ではないが、母親であったり、配偶者であった場合は、2500万円、③被害者がその他の立場である場合は、2000~2500万円となっています。
上記はあくまで基本となる値であって、個別に考慮すべき事情がある場合は、基準値から修正された賠償額が認められた例もあります。また、上記の慰謝料とは別に、近親者固有の慰謝料が認められるケースもあります。

5.慰謝料請求の方法

慰謝料は、労災にあってしまった労働者自らが、会社に対して請求することもできます。
もっとも、正確な知識がなければ、会社に対して適切な対応をして請求をすることは難しいでしょう。
また、あくまでも裁判上の基準であるという理由で、提示額を支払ってくれないという場合も考えられます。
そこで、一度専門家である弁護士に相談するのも、ひとつの手です。
弁護士は、知識が充実しており、交渉に慣れていますから、適切な対応が期待できます。
また、弁護士に依頼することで、交渉が決裂した場合の訴訟を見据えることができますから、会社としても結局裁判上の基準額で賠償責任を負うということが避けられず、事案によっては訴訟を提起せずに早期解決できるという事態も期待できます。
結果的に、自ら交渉を行うよりも多額の賠償金を早期に受け取ることができる可能性があるといえるでしょう。

労災事故にあってしまった場合は、今後必要となるお金をきちんと賠償してもらうためにも、弁護士への相談を検討されてはいかがでしょうか。
ご相談は、電話メールLINEでも可能で、いずれも無料です。