Q 仕事中に指を切断!補償はどうなる?

A 労働災害によって、指を切断することになってしまった場合は、労災保険からの給付が受けられるほか、会社への直接請求によって後遺障害慰謝料を受け取れる可能性があります。

本記事では、業務中に指を切断する事故が発生した場合の、労災認定や損害賠償について解説いたします。

1.指切断の事例

業務中に指を切断してしまう例として、電動の刃物(チェーンソー等)を扱っている仕事中に、機械の操作を誤ってしまい、指を切ってしまう例が考えられます。
電動工具の力は非常に強いですから、指が巻き込まれてしまえば、骨ごと切断される可能性があります。
あるいは、重量が大きい物が指の上に落下してしまったり、プレス機に巻き込まれたりするなどして、指が壊死してしまう例もあります。
このような場合、手術による指の切断をせざるを得ない場合があり、結果として労働災害により指を切断することになってしまったといえます。

2.指切断の事故が、労災認定されるまでの流れ

⑴ 要件
指を切断してしまったことが労働災害によるものであると認定されるためには、労働者の負傷・疾病などが、「業務上の事由」(労働者災害補償保険法1条)によって発生しているといえることが必要です。
では、「業務上の事由」といえるかどうかは、どのように判断するのでしょうか。
これについては、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの要素が含まれている事故であったかどうかによって決まります。
まず、労働者が労働関係の下にあった場合に起きた災害であれば、「業務遂行性」の要素があると判断されます。
要するに、従業員として仕事中の事故でないといけないということです。
判断に迷う例として、就業中にトイレに行く時間や、出張中仕事をしている時間が考えられますが、これらはいずれも業務遂行性の要素があると判断されています。
次に、業務遂行性があることを前提として、業務と負傷の間に因果関係があるといえるならば、「業務起因性」の要素があると判断されます。
業務に関係する作業をしている際に傷を負ってしまったのであれば、業務と負傷の間に因果関係があると判断されることが通常です。
一方、業務中、業務とは無関係に行っていた私的な行為によって傷害を負ったのであれば、因果関係が否定され、「業務起因性」の要素がないと判断されます。

⑵ 労災を認定する手続きの流れ
労災の認定は、一次的には、労災保険制度の中で行われます。
したがって、労災保険給付を担う労働基準監督署へ、申請を行うことになります。
どの労働基準監督署かというと、会社の所在地を管轄する労働基準監督署になります。
申請についてのルールは、厚生労働省のホームページで詳しく説明されています。
>>厚生労働省のホームページはこちらから

3.労災給付額の相場

労働災害による損害が発生した場合、「障害(補償)給付」と呼ばれる労災保険給付によって、補償を受けることができます。
障害(補償)給付の具体的な金額は、負ってしまった障害の等級に応じて決まります。

障害等級 障害(補償)給付
(第1級から第7級までは年金、
第8級から第14級までは一時金)
障害特別支給金
(一時金)
障害特別年金
(年金)
障害特別一時金
(一時金)
第1級 給付基礎日額の313日分 342万円 算定基礎日額の313日分
第2級 277日分 320万円 277日分
第3級 245日分 300万円 245日分
第4級 213日分 264万円 213日分
第5級 184日分 225万円 184日分
第6級 156日分 192万円 156日分
第7級 131日分 159万円 131日分
第8級 503日分 65万円 算定基礎日額の503日分
第9級 391日分 50万円 391日分
第10級 302日分 39万円 302日分
第11級 223日分 29万円 223日分
第12級 156日分 20万円 156日分
第13級 101日分 14万円 101日分
第14級 56日分 8万円

指切断・指損傷に対応する等級は、3~14級であり、損傷の程度に応じて分かれています。

障害等級 後遺障害の内容
第3級 両手の指全部の喪失
第4級 両手の指全部の用廃
第6級 片手の指全部、または親指を含む指4本の喪失
第7級 片手の親指を含む指3本、または親指を除く指4本の喪失
片手の指全部、または親指を含む指4本の用廃
第8級 片手の親指を含む指2本、または親指を除く指3本の喪失
片手の親指を含む指3本、または親指を除く指4本の用廃
第9級 片手の親指、または親指を除く指2本の喪失
片手の親指を含む指2本、または親指を除く指3本の用廃
第10級 片手の親指、または親指を除く指2本の用廃
第11級 片手の人差し指、中指またはくすり指の喪失
第12級 片手の小指の喪失
片手の人差し指、中指またはくすり指の用廃
第13級 片手の小指の用廃
片手の親指の指骨の一部喪失
第14級 片手の親指以外の指の指骨の一部喪失
片手の親指以外の指の遠位指節間関節の屈伸不能

上記の給付のほかにも「療養補償給付」(病院代・薬代補償)、「休業補償給付」(働けなかった日の賃金補償)、「傷病補償年金」(3級以上の傷病が1年6か月を経過しても治らなかった場合の一時金)などがあります。

4.損害賠償について

⑴ 労災補償給付と損害賠償請求の違い

これまでは、労災保険による給付を見てきましたが、労災事故の発生について会社に責任が認められる場合は、別途、精神的苦痛に対する慰謝料慰謝料など会社に対する損害賠償請求が認められることもあります。
労災保険給付は、損害の全部を金銭的にカバーするものではなく、あくまで補償としての役割を持っています。これに対して、会社への損害賠償請求は、損害全額が賠償の対象となっている点で異なります。
もっとも、会社に対して損害賠償請求を行うには、会社の落ち度を指摘し、立証しなければなりません。

⑵ 会社に損害賠償請求をする手段

会社に損害賠償請求を行う方法は、①任意の交渉、②労働審判の申立、③訴訟の提起といった手段が考えられます。
しかし、②・③は裁判所を通して行う手続きであり、これを本人が行うことは、一般的に困難であるといえます。
また、①についても、十分な主張・立証を行わなければ、会社に相手にされず、結局解決に至らないといった事態が想定されます。

⑶ 弁護士に依頼するという選択肢

会社と労働者は、情報量やマンパワーという点で、平等ではありません。
さらに、労働災害にあってしまった方が、自ら賠償請求を行うということは、非常に大変です。
そこで、専門家である弁護士に依頼するということが考えられます。
弁護士に依頼をすれば、情報量・マンパワーといった格差を解消した上で、主張・立証活動を行うことができ、会社に対する損害賠償請求を進めることができます。
その結果、ご自身で手続きを行うより、多額の賠償金を受け取ることが期待できます。

会社に対する損害賠償請求を検討する際は、ぜひ一度、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

ご相談は、電話メールLINEでも可能で、いずれも無料です。